はずレールガン

もがくしょうもないオタクの脳内

『ポッピンQ』今更感想

ポッピンQ 感想

TSUTAYAで目に留まって、「そういえば...」と思い、レンタルして視聴。


思いの外面白かった。
主人公はじめ、それぞれのメインキャラが中学卒業を目前に「ある失敗を境に時間が止まったままだと感じ、引け目を感じている」状態で、ポッピン族の世界に召喚され、その世界での困難が、実生活の困難とリンクし、それを超克したときに時間を進められた=成長ができたという自覚をもたらす...という王道的物語。
起承転結のテンポも存外悪くなく、作画レベルも高水準。
キャラクターデザインもわりかしキャッチーかつポップなテイストで、現代的でなじみやすい線であると感じる。

タイトルの「Q」も、「時間を進める」ことをテーマにした、時計の針を模したものということが分かる。
このテーマを主軸にストーリー展開がなされるため、ブレていると感じることなく、わりかし爽快感とともに映像を視聴することができた。

何がいけなかったか。...というより、何故人気に火がつかなかったか。

これは完全に広告手法の失敗はある気がする。
作品の出来以上に、それを売り込む手段に乏しかったというのが自分の感想だ。

また、これがなかなか言語化が難しいのだが、個々の要素が、どこかで絶妙に「噛み合わなさ」があるように感じられた。

異世界への召喚、そこでの異生物たち、卒業間近の女子中学生、群像劇、成長劇、変身少女、アイドル風ダンス、...個々の「属性」的なものを抽出すれば、この作品はこのようなものである。

これのどこが、噛み合っていなさ、もしくは「モヤモヤ」を感じさせるのか。

ともすれば、「詰め込みすぎ」があるのかもしれない。
たとえば、「変身少女」の段階で既に物語の困難を打破する下地ができあがっているのに、
さらなる状況打破のために、今度は「ダンス」を用いることになる。
そして、「変身少女」「ダンス」これらは、ストーリーでポッと出にさせないため、下地となる理屈や描写はこの作品ではきちんと作っている。説明があると言うことだ。

約100分という決められた尺の中で、アレをやったりコレをやったり、かえってバラエティに富みすぎる演出をしてしまったがために、演出方面においては「言いようのない一貫性のなさ」を感じさせられたのかもしれない。
僕個人の感想では、ここがこの作品の歯がゆいところだと思える。

あとは、作品のCパートともいうべき、「高校生活の今後を予見させる描写」について。
これは蛇足だが、要するに「予告編」だ。これについては、...ガンバレ!というのが感想である。

しかし、テンポ自体はほんとうによく、「時間を進める」ことをテーマに群像劇と成長劇を尺のなかで描ききるのは、「王道で快活なストーリー」であると思えた。


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僕はこの作品、実は「チャージマン研!」や「DYNAMIC CODE」などのように、「期せずしてできあがってしまった怪作」を期待して作品を視聴したというのが正直なところ、事実だ。

しかしふたを開けてみると、とても堅実な作品であったため、素直に感動です。

ただ、難しいところが、そのような「怪作」にもなり得なかったために、知名度としては...というのがあるだろう。

でも僕は割と好ましく思えるな。この作品。
リアルタイムで劇場に視聴をしにいったら、正直ハマっていたかもしれない。
作品の方向性はストーリー自体は定まっているものの、メディアとしてはどのように売り込むかが微妙に定まっていない、絶妙にどこか不安定な作品。
それでも、熱量自体は感じられる作品だったのだから。

というか、「感想を書きたくなる作品」というのは、そういうことなのだ。自身の琴線に触れなければ、とうてい感想など書かないのだから。