はずレールガン

もがくしょうもないオタクの脳内

「リトル・ピープルの時代」読了した

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実に500ページ超という、質と量共に膨大だ。しかしそれゆえに高い熱量と本人の作品愛、そして独特だが確かな審美眼と多量のカルチャーへの知識を以て、これからの時代をどう生きていけば良いか、そしてどのようなレンズを以て世界を視れば良いかを提示してくれる、素晴らしい本であった。

 

僕ね、物心ついてから仮面ライダーまともに観てないのよね。

今やっと分かった。現行の作品はさておき、観てみたいのから観てみることにする。

 

ロボットアニメのあり方は、半ば形骸化してしまっている。それが何故なのか。

当書はこの問いに明確な答えを出している。

ビッグブラザーというものが既に壊死した現代において、その表現を主題とするロボットアニメの描き方は、既に通り過ぎた道への懐古だとか、そういうものでしかない。だからこそ、確固たる、現状打破のキーとなるメッセージを語り得なくなってしまう」これが、本書を通じて思い当たる僕の答えだ。

 

仮面ライダーという作品が、時代性を写すことに非常に鋭敏である、というより、ならざるを得ない境遇のもとに成り立っているからこそ、この作品を通じて社会を見る目を育てていけるのだということ。それを、口酸っぱく説いているのだから、これは僕も現代のオタクとして、観ておかなければならないものだと焦燥感に駆られた。今更のことだが。

 

 

これは、評論本である。と同時に、本人の愛をぶつけられるだけぶつけた、熱の塊でもある。

 

僕は、人が愛を以て何かを語っているのを見るのが、たまらなく好きだ。

誰かが何かを批評する。その行為には、出る杭を打つだけとか、揚げ足取りにしか思えないような、ツマラナイ行為だって溢れている。

でも、宇野さんの批評は、「スキ」ありきだ。

 

そのようなスタイルを受容することは、僕にとってはとても気持ちの良いことなのだ。