無限のリヴァイアス Sere 11「まつりのあと」キャプ
放送日=1999.12.15(水)18:00~18:30
脚本:黒田洋介
絵コンテ:大橋誉志光
演出:大橋誉志光
演出助手:松村亜澄
余談をさせてください。
この回は本当に素晴らしい。
・アバン
ヴァイタル・ガーダーという未知の巨大兵器を用いた戦闘を華々しい勝利を飾ったという事実は、行き場のない不安に襲われる少年少女たちにとって、ともすれば「殺し合いの勝利」だったとしても、究極的に「生きるか死ぬかを天秤にかけ、生き残った」という事実を価値観として鑑みると、確実に喜ばしいことだ。
差し迫った恐怖を脱するのに、言語ベースの思考を抜きにすれば、つまり本能でとらえれば、「生き残ったらホッとする」、これは当然の感覚だろう。
ともかく、調和が大事と考えた昴治。突き詰めると、上記の価値観(人を殺して勝利して景気づけ?)に照らし合わせると、もしかしたら倫理的にどうなの?なのかもしれない。そう考えると、ここでの昴治のパーティ発案は、そうだとしても皆が今ここにいることを少しでも良しとしたい考えがあったのかもしれない。
そして面白いのは、アバン時のフー・ナムチャイの意気揚々とした、もはやアジテーションの域にすら達するその司会っぷりに、昴治は「戦意を高揚させてどうする」と毒づくのだ。
パーティだからって、度の過ぎたことやりすぎじゃないか?まあ楽しんでるならいいけど。
昴治の心情はおおむねこんな所だろう。同時に、「過激なパーティはよくない」という昴治の捉え方は、(個人的解釈だが)パーティ開催の倫理観の是非という観点を昴治が持っているから、という部分にも通ずる。
・雰囲気
お祭り回。厳密にはちょっと違うだろうけど、「水着回」にも匹敵する会でもあろう(ミスコンの開催)。
全編通して閉塞感と隣り合わせの同作だが、この会は華やかでポップなテイストを放つ、オアシス的な雰囲気を放っている。
ラダンとその弟子というコミカルなキャラクターがお見えになるのもこの回。
アインヴァルト(のリアルモデル)が躍るのもこの回だけ。ネーヤも普段増しに踊る。
ネーヤは艦内の者たちの感情のフィードバックを受ける存在である。つまり、艦全体の雰囲気が「めっちゃ楽しい」ことの証左である。おそらくこの時ネーヤは「めっちゃテンションが上がった状態」という感情をおぼえただろう(と書くとなんか草)。
しかし、この回の恐ろしいことは「人死に」が確実に起きていることだ
(ファイナがサンディを殺めている(過去にしている))。
それも人為的にである。戦闘によってでなくて。
また、話のオチとして「リヴァイアスクルーはテロリスト認定、世界の敵とされる」という(やや強引な、尺や引きの関係でこうなったのだろう)悲劇の到来がある。
つまり、この回には「パーティの華やかさ」という喜劇に、「ファイナの闇」と「テロ認定される悲劇」という毒が混ざり合っている。
この純度100パーセントでない明るさというのも、やはり無限のリヴァイアスの「らしさ」が存分に出ているといえよう。
・昴治の本領発揮
昴治が主体的に行動する。リヴァイアスの中の皆のためにも、恋愛の為にも。
無限のリヴァイアスという作品は確かに群像劇だが、この回の確実な主人公は、確かに昴治だと思える。だってパーティをやろうって考えたの昴治だもの。
「受け身なだけのあなたの行動が、人を傷つけることだってあるのよ」
この言葉に奮い立ち、仕事より好きな人をとる昴治。
正直ここ、賛否別れる所だろうが、好きなシーンだ。
昴治は「自分の好きな人が好き」な人間だと分かる。手に届かない何かまでも背負って一人で苦しくなったりどうにかなったりするんでなくて、自分にできる範囲で、そして自分の隣にいる人のことを考えて行動する、昴治はそういう人間だ。
・僕の思い出
また、個人的な思い出になるのだけど、僕がこの回が印象に残っていることの理由に、
「自分と重なったから」というのもある。
僕の通っていた高校では、学校祭の出し物として巨大行灯を制作しそれをクラスの男子たちが担いで道路を歩くというものがあった。
僕は、学校祭の準備期間は毎年その行灯制作グループに入っていた。
1年生、2年生の時くらいだが、僕はグループではリーダー的存在となっていた。
パーツ制作の指示を出したり、設計をしたり。それらを受け持っていた(出来栄えはお察し)。
準備期間のとき、僕は放課後が好きだった(放課後に学校祭準備に入る)。
自分にとってやるべきことがあって、存在感を発揮できる場所があって、皆から声をかけられる。
普段の僕は、クラスで一緒に行動する人は正直いなかった。かといって受け答えにどもったりするでもない。いわゆる「陰キャ」には限りなく近いし、もちろん「コミュ障」の類なんだけど、普通の会話はできる。そんな人間だった。自分の「キャラクター」を出すのを極端に恐れていた。
自分から誰かに声をかけるとか、話しかけるとか(正直今もだけど)できなかったから、否が応でも会話が発生するこの学校祭の準備期間は好きだった。
クラスで普段話さない人と話せる。輪に入った気分になれる。浮かない。
そんな日々は、充実感があった。
丁度、高校2年生の学校祭の準備期間に、僕はリヴァイアスを観返していた(3回目)。
作業には充実感がある。色々やって、いろんな人から声をかけられて。
でも帰るとクタクタ。だけどそのクタクタは、悪いもんじゃないって思えた。
この回には、そんな昴治が描写されていると思った。
だから、当時の僕は、心底相葉昴治という人間に感情移入をした。
だからこそ、疲れてベッドに倒れこむ昴治を横目に、ふいに「...お前いいよ」と心底昴治を認めるような声音で吐露するイクミの台詞なんかは、昴治でなく、自分も、今頑張っていることを認められている気がした。
さらに妄想的なことを言えば、そんな機会にファイナのように仲良くなる女子...の存在はある訳がなかった。残念ながら僕は昴治のように能動的にはなれなかったのだ...
でも、女子絡みのことといえば、覚えていることがある。
どんな作業だったか、手の平にボンドがべったりついて、それが乾いて、でそれをはがすのに必死になっていたら、ある女子が剥がすのを手伝ってくれた。野球部のマネージャーだったか。普段眼鏡かけていた気がするのに。そのときはつけていない。
かわいい人だった。触れる手と手。思いの外距離は近い。思わずドキっとした。
ドキっとしただけ(ヘタレ)。
あとは、何人かで固まって作業をしていたとき。僕の目の前にはいわゆる「陽キャカップル」が座っていた。仲睦まじくしていて、僕もその会話に参加をしていた。で、途中で僕とそのカップルの女子以外が席を立っていった。会話は僕とその子だけになったのだが、そんな折に「じゃあ、ナオ君も私とラブラブする?」というようなことを言われたのを覚えている。僕はこう返した。「したいかもだけど、〇〇(彼氏)君いるんでしょ、彼とラブラブすればいいじゃん」と。この返しは…どうだったのだろう。
まあ、僕の返事はともかく。そんな直球な台詞を言われたのですごく内心ドキっとしたし、本音では「ハイ!!!!めっちゃしたいです!!!!!」と興奮したのを覚えている。目がぱっちりしていてすごい素直で、髪型もボブで。確かおかっぱちょい入ってるショートボブで。本名も覚えている。正直あれ以来まじで好きだったな。勉強も教えたことあったけどほんと受け答えはっきりしてて。これ普通に恋してたんじゃないか。懐かしいや。メールアドレスが彼氏の名前入ってるのね。別れたときキツない?とか思ったけど、めっちゃ直球で人のこと好きになるのって素敵だなとも思ったし、やっぱ彼氏いるんだなあと落ち込みもした。
...うるせぇ!キャプキャプ。