はずレールガン

もがくしょうもないオタクの脳内

イデオンTV版観終えた

酷いアニメだなぁ…。

(出来が悪いという意味ではなく、内容の惨たらしさのことを評する意味でです)

 

物語の終局に向けて、状況を悲惨なものにしていく空気感の描写は秀逸としか言いようがない。

かつての戦いで疑心暗鬼に陥り、ソロシップの面々を完全に敵視するようになったアジアン星のトップ、

その者の作戦に巻き込まれてしまい命を落とすリン、

戦いの中で散って行こうとも、今際の際でもイデの力に魅せられ絶命するギジェ、

そんな愛する者を続けざまに失いおかしくなっていくシェリ

人の死があれば、その出来事は尾を引く。

悲しい事態にどう対応するのか、異なる故郷の者たちと手を取り合うのかを、ただずっとイデは見ていた。

 

イデは、ソロシップの面々を総合した感情を力として出力させる、ソロシップクルー寄りの人格と、

ソロシップクルーをはじめとして、惑星人たちの営みを俯瞰して評価する「審判」寄りの人格の二つを併せ持つキャラクターだと思う。

しかしどちらの性格も決していわゆる「神様」のような全知全能者の立ち位置から何かを判断し、公平な立ち位置から人々を裁くのではなく、

あくまで「イデ」という一人格の立場からこの作品の登場人物たちに試練を与え(たつもりになって)、力を与えていた。

 

イデという存在が何者なのか、答えが出ないままTV版は終了したように思えるけど。

僕個人の感想では、イデなんて存在は大嫌いだし、余計なお世話だし、酷く歪んだ性格の持ち主だと思う。

人と人の営みに、自分の持つ力を以ってチャチャ入れしてやり直して。

こんなことされたら頭に来るよ。

地球上で暮らす、例えばアフリカのサバンナでの豊かな生態系があるけど。

そこで例えば、バイソンなんかの群れ同士がいさかいを起こして、自分の縄張りのために互いを嫌い、殺そうとする感情のもとに争う…そんなことが起きたら、僕たちは遠隔操作のできる航空機から機銃掃射を以ってそれを制圧するんだろうか?

例えが少し極端かもしれないし、的を得たという自信はないけど、イデのやっていることはそういう「要らぬ力の発動」だと思う。

これは個人の思想によるところ(「あるがままを受け入れる」的な思想)だし、僕は社会ダーウィニズムの一部を信じているから、本当にイデの余計なお世話は邪魔ったらありゃしない。

 

…イデに対する愚痴みたいになってしまったので、再び本編の感想に戻ります。

 

TV版はドバがDSドライブをかけて離脱するソロシップとイデオンを追ったところでイデが全能力を発動、全滅してエンドになるけど…

これはどう見ても尺足りなかったんだなぁって感じでやるせない。

えぇ、こんなタイミングで発動させるのかよ、と思ったし…。

 

最後のナレーションは、まるで脚本やコンテ本なんかに書いている地の文をそのまま読み上げたかのような演出だし。

そのナレーションで語られていた所をアニメーションとして、ドラマとして描かれていれば観た後の余韻が素晴らしいものになったろうな、と思わずにはいられなかった。

 

とはいえ、ナレーションは「最後はこうするつもりでした」というプロットを教えてくれるかのようで、その内容自体はやはりこれがアニメで描かれていればワクワクだよなぁ…!と思いつつ、だったので。

アニメ全体の展開は本当に良かったなぁと思う。最後の最後の構成が、あまりに時間が足りなかったんだなぁ、というところが歯がゆい。

そんな物足りなさは劇場版で吹き飛ばしてくれるだろう、というワクワクを込めて、今日明日にでも劇場版を借りてきます。

 

なんだかんだイデオン、イイ。とてもイイ。

ギジェとシェリルのかけ合いなんか、とても色っぽい雰囲気が出ていて素敵。

終盤は自然に男女間の恋愛描写が増えていくけど、吊り橋効果なんて考えたら頷けるし。

何しろ帰る場所がなく、地球軍からもバッフクランからもその身を追われる、正に「スペース・ランナウェイ」な状況なら、誰かに寄り添わずにはいられないのかもしれない。(このことがED中の「傷を舐め合う道化芝居」だったりして)

ここまで状況の絶望感と閉塞感を味わわされるアニメはなかなかないし、本当に面白いと思えるアニメだった。

メカの魅力をそのままドラマに組み込めるからこそ、これは「良いロボットアニメ」だ。

こういうの描けるのは本当に憧れる…。