はずレールガン

もがくしょうもないオタクの脳内

1212〜 会社日記

早朝勤務を終えた後、9時に再び出社した。

部長と、新卒者の説明会に赴くためである。

 

あまり大きくはないビルのフロア2つが会場となっていて、そこに会社のブースを設けた。

説明要因は部長と僕の2名だ。

 

結果から言うと、その日1日は全然参加者がいなかった。

 

他のブースも、一部の企業は盛況であったようだが、全体的にはまばらというか、スカスカであった。

 

説明会は10時30分から開始だった。30分1ターン、10分休憩、という流れを16時ごろまで繰り返す。

その中で僕は14時頃まで部長と同席していた。

途中退室したのは、それ以上いたところで参加者は来ないだろう、という部長の判断からである。

 

で、この日、僕が見た参加者は3名。いずれも男子。

 

なんというか、かつての自分も含め、こう言ってしまっては悪いのだが、その境遇を多少邪推してしまうような方々であった。

 

意地悪な書き方をしよう。僕の印象に残ったそれぞれの方々の特徴は、以下のとおり。

スマホを持たずガラケー使いの者

・文系学科で9月卒となった者(僕と大学同じ)

・年齢不詳。スーツを着ず、黒のパーカーとニット帽、肩掛けカバンで説明会に臨む者(帽子は事情は分からないが説明中脱がず)

このような三方であった。

それぞれのターンに、一名参加するというような形。

 

僕の感想は、自分のことを棚に上げさせてもらえるならば、「なんともなぁ…」である。

部長も似たような感触を抱いているようであった。

しかし、2人目(同じ大学の卒業生)の方は愛想が良く、大学のこともあり、親近感を抱いてはいた。

 

さて、説明会も後半にさしかかるといよいよ人が来ない。

ここで面白いことが起きた。

 

部長が「ガンダム モビルスーツ ランキング」だとか、「ガンダム youtube」だとか検索し始めたのである。

 

部長は僕がガンダムオタクであることを知っている。また、部長もいわゆる「ファースト世代」である。僕はどっぷり宇宙世紀のオタクであるし、会話も全くついていける(というか、これに関しては自慢にならないが僕の方が知っている)。

 

そのような流れがあってか、部長はこのような事を始めたのだ。

参加者が周囲にもいないとはいえ、プロジェクターを通して壁に堂々とPC上のガンダム関連の記事や動画が映し出される様になんとも言えない気分と少しの嬉しさ、気恥ずかしさを覚えるのだった(恥ずかしさがほとんどだわ!)。

 

さて、ここらが潮時ということで、僕は14時ごろに退散させてもらったというわけだ。

 

実働時間こそ8時間程度はあったが、その日は午後がある程度時間が空いたため、家事や料理の作りおき、先日の記事のHGナラティブ制作に勤しめたというわけである。

 

ちなみにこの日、帰り際に出展企業一覧のパンフレットをもらっていった。

部屋でそれを眺めながら、やっすいインスタントのコーヒーをすすっていたのだが。

勤めるようになった今、労働条件なんかを見返すと、どこもかしこも怪しい書き方ばかりをしているな、知らない人間をまやかす書き方をしているな、と思わずにはいられなかった。

それは、ある程度は僕の会社も当てはまっている。

 

かつての大戦末期、窮地に立たされた某国は、自国の兵の士気を上げるために強く鼓舞した。しかしそのやり方は、「もっと頑張れ」と発破をかける程度である。いわゆる根性論というやつだ。

劣勢に立つものは、なるべくしてなっているというか。

 

会社の求人なんかにも同じことが言えるのかもしれない。それは何かというと。

業務内容・福利厚生の諸条件を詳らかにするのではなく、「ここはアットホームな職場で楽しい」「あの人に出会えたから、辛いことでも頑張れる」「(口角をフルに引き上げた笑顔の写真の数々)」…

こういった「具体的な記述」ではなく、「美談」、「煌びやかそうなイメージ」という「ガワ」で取り繕う。これがいわゆる、先の根性論的なことに似ていると思うのだ。

 

こうも散々貶めているが、僕の会社の求人ページも、まさにそれ。自嘲すべきことだ。

さらに面白いのは、数十年ぶりに新卒入社した僕を広告塔として使うため、そのページには僕の映った写真をいくつも載せているのだ。

恥ずかしさと、自分はピエロになっているという虚しさ、その流れに従うしかない自分の情けなさ。

諸々の情念を抱きつつ、僕はそのパンフレットを眺めていた。