はずレールガン

もがくしょうもないオタクの脳内

最近読んだ小説・観たアニメ映画

●BNA ZERO まっさらになれない獣たち(小説)
1週間ほど前に読了。
読みやすい文体ですらすらっと読めた。
アニマシティのロゼ市長と大神さんの過去エピソードという体だった。

また時系列はWWⅡ直後ということで復興や再就職に四苦八苦する市民に更に獣人という虐げられる者たちが描かれていて世界観は中々シビア(アニメもわりかしシビアめだったがそれ以上かも)。

ともすれば世界設定とお話は中々陰惨気味かもなのだけど、獣人たちのロゼ曰く「頭の足りない」スタイルがかえってギャグらしく描かれていたり、テンポの良い文体がお話を過度に暗くしない方向にしているのかもしれない。
世界を回っても尚人と獣人の交わる未来を信じて止まないロゼの決心はぐっとくる。
スピンオフとしてかなり楽しめた。

バルバレイ・ロゼというネーミングの由来は同作を読むと実に感慨深い。
姓と名のコントラストとそれが生み出す皮肉にも自嘲にも似たミーニングを感じさせる。

...んだけど、BNAの本編を一年前ほどに観たっきりだなぁ。
で、この小説は視聴中当時に買ったものなんだけど読む暇なかったりなぁなぁでそのまま積ん読していて漸く今になって読了したという次第。
本編再視聴はしたいっすね。BNAのお話全体に対する不満点はあるっちゃあるんだけど、
みちるとなずなの描写の等身大らしさだとか、なにしろOP・EDが未だに一日一回くらい聴く程度には大好き。BNAってなんかスタイリッシュでいいんだよね。みちるちゃんもたくましいのがすんごい好き。

実はこの著者の方(伊瀬ネキセさん)の本をもう一つ持っている。積ん読で。
それは2019年の夏に公開されたアニメ映画「HELLO WORLD」のスピンオフだ。
なんだろう、この人スピンオフ描くやつで仕事回ってきやすかったりするのか?
作品を複数読んだわけではないのであれだけど、この作品を読む限りではとても読みやすい文章で頭の中に映像も浮かんできやすくて(これはアニメの功労でもあるが)好印象。

 

 

 

 

 

虐殺器官(小説)
これも今年のお正月くらいに購入して、ちまちま読んでは放置みたいなことを繰り返していたのだが先日漸く一気に残り半分くらいを読み切った。

一言で言うと、ひったすらグロテスクな作風。
そのグロテスクが個人的にはたまらない。
機械的な構造体とそれを織りなす人工筋肉。しかして人工筋肉いえどもそれらは極めて有機的。
そしてそういったテクノロジーを駆使して戦争行為を行う先進国家アメリカ。
テクノロジーの恩恵。戦闘の最大効率化。その極地における戦闘行為は、虐殺にも近しい。
(作中における”虐殺”は、このようなニュアンスで使われるのではないのだけど)

あとは文章のボリュームが凄すぎる。
もうスノッブとかいう域を越えるほどの膨大な引用と用語の数々。
そういった言葉のシャワーによってどこからが現実引用かどこからがフィクションなのかを惑わせて、これはすべて未来現実のことなのかという認識へと吸い込まれるようだった。作中のウィリアムズの言葉を借りれば、(この作品を読むのは)「一種のトリップ」だ。

そしてアニメ映画版を原作ファンの多くが煮え切らずに思っている理由が漸く分かった。
原作の主人公クラヴィス、とってもセンチメンタルを抱えている。

母と自分との関係、少年兵を殺すことの責任の所在への自問、ルツィアへの思慕等。
作中のお話はクラヴィスの一人称で進められることもあり、機械的でグロテスクな光景のなかに悩ましい自意識が展開されることで重層的な世界を感じられる。

そしてラスト。ここは原作と映画版で大いに違う。
まず明かされる、ログデータを介して発覚する”母親のクラヴィス観”。
これが明かされたときは本当にショックだった。人と人とのつながりの矢印は均等に向かい合う訳じゃないのだとも思ったし、クラヴィスの重責をあざ笑うかのようであった。
そして、アメリカを混迷に陥れたクラヴィスの落ち着き様だ。
外での銃火器の発砲音を横目に自室で悠々とピザを食べるクラヴィス

異様そのものの光景だ。しかしその異様に至る段階にも言いしれぬ説得力を感じる。
また、これはウィリアムズのいう「認証でピザを受け取る世界」の次段階なのかもしれない。
認証でピザを受け取っている間、世界の僻地では少年が犯され、殺され、殺す。
そこから一歩シフトする。
認証でピザを受け取っている間、一歩外に出た先で、市民が殺し合っている。
そんな世界。

間違いなく地獄だ。
しかし、それをロジックでは否定しきれない恐怖がこの作品にはある。
間違いなく.......スンゲーーーー作品だと思う。

 

 

 



 

●シン・エヴァンゲリオン劇場版(映画)

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トータルで3回観た。公開日翌日に一回、4月中旬に一回、つい最近3.0+1.01を一回。もう行かないと思う…が興収100億行って欲しい。


公式曰く修正したカットがあるとかなんとかだが、僕には変更点が分からなかった。
ちなみにこの時後輩も同行していたのだが、今回で8回目の視聴になるらしい彼をもってしても変更点がよくわからなかったのだと。

感想。
正直言ってもう感想がない。

初見時はドバドバに泣いた。
やっぱり僕はシンジ君=自分と思っている人間だったからだ。
完全にシンジ視点というか、「誰かからなんか言われるシンジ」を「なんか言われる自分」として視聴していた...し、そういう視聴態度だった人多いんでないだろうか。

まあそんなだから、シンジというか...庵野監督がエヴァンゲリオンという呪いともいえる作品を終えて現実に還ることができました(+シンジ=エヴァを視聴するオタク)という構造になっているような気もする。

よかったよね。

初見時に感動したのは、「ああみんな救われたぁ良かったぁ僕もオタクとしてなんか今のスタンス認められた気がするぅ良かったぁ~~~~」と泣いていた気がする。

というのがつい3ヶ月前。

しかしその後仕事は忙しく、現実といざ戦う言うてもその現実の仕事が大変に思えたり思ってもない発言をして騙くらかす自分が嫌いだったりで心の中で灰色になっていったのを覚えている。視聴したときに流した涙はウソだったのかよ。

で、4月とかになって、ふとしたきっかけで
宇野常寛さんの「シンエヴァのここが良くなかった」なる批評動画をみた。

批評座談会〈シン・エヴァンゲリオン劇場版:||〉|イシイジロウ × 石岡良治 × 宇野常寛 × 平将明 × 吉田尚記 - YouTube

↑該当動画と違うけど感想戦してる動画。僕が見たやつは有料化されちゃったかな。

 

 

鋭いなぁと感じたのは、
「作品の評価というより作品の価値がソーシャルなものと不可分になっている」
というものだ。
感想をSNSに投稿するのと、そして切っても切れない「庵野監督よかったね」の感想。
エヴァといえばほぼほぼ結びつくであろう作り手の庵野監督への賞賛。
そして庵野秀明(=シンジ)と庵野モヨコ(=マリ)が結ばれることによって大団円となる。
このことへも指摘していて、
私小説の側面が強すぎて、俺鬱だったけど素敵な嫁さんゲットして救われました~よかったです~ってそんなんで視聴者気持ちよくなれる訳ないだろ。現実で今四苦八苦して必死に生きている人だっているしそういう人たちには全然感情移入できる部分じゃなかったと思うよ」とも宇野さんは言っていた。
これほんと鋭いと思う。
要はInstagramでもFacebookでもTwitterでもなんでもいい、SNSで「私輝いてる」的なキラキラ投稿をしまくって充実しているアピールみたいな。
あといわゆる「理解のある彼君」漫画とか。そういう存在に近しいのかなと思ったよ。シンエヴァは。

シンエヴァ嫌いじゃないんだよね。熱量めっちゃすごいし謎解きとか考察とかし甲斐あるのもすんごい分かる。小五の時に姉をきっかけにしてエヴァ見始めて子供なのに難解なの見てる俺みたいに悦に浸りまくってたよ。愛着みたいな気持ちはすんごいある。

でもやっぱ、ほんと心苦しいんだけどシンエヴァは作品としてはなんか普通に終わったなぁみたいな印象しかない。

お話の格子けっこう単純じゃないすか?

第三村で親睦を深めて立ち直るシンジ君→敵陣特攻、スゲード迫力バトル→メンタル鍛えたシンジ君が精神世界でエヴァに囚われた人たちを一人ずつカウンセリングしていく→エヴァっていうのがいけないんだ→エヴァのない世界(現実へ)→HAPPY END

あとエヴァの魅力否定してるかもしれないんだけどエヴァの衒学的なとこちょっと嫌いになってきたかもしんない。
というか、お話のキーポイントに引用に深みある設定使ってくるとかならいいんだよ。
でもただの一つの世界構造物とかにやたらと設定つけまくる(もしくはあるっぽくみせる)のがなんか気にくわない。
それって作品のお話と関係ない設定ですよね?みたいな。なんか注力方向の違いを感じる。
ゆーてもシンエヴァ、もはや全方面に注力の限りを尽くしている気がするので「貴様らの頑張りすぎだ!」という感想にしかならないか...。
まあそういうのもあるし、僕の脳のキャパも単純に足りない説も当然ありますよ。文学部とかでもないし聖書とかの引用されてもしどろもどろで調べまくるしかねぇ。だけどそれとお話調べてどうなるっていんだ...みたいなのを考えたりする。というかこの時点で考察厨向いてない

なんかみんなスゲースゲー言いまくっててシンエヴァは神!!至高!!
みたいな風潮を感じて息苦しさを少し感じちまう。そういう「息苦しさ」もソーシャルと合わさった感想なのだとも宇野さんは指摘していたな。

なんか懐古厨みたいで恐縮なのだけど個人的には旧アニメ版というか「Air/まごころを、君に」が大好きだ。心の中でジワァっと何かが溶けてゆくような感覚を味わえる。本当に唯一無二の作品だと思う。

作中でいうアスカの「大人になっちゃった」という言葉がある。
それがそのまま僕のシンエヴァの感想かもしれない。

まーそういうスタンスでいいのかもしれないよね。
僕は、作品と向き合うことはコミュニケーションの側面があると思っている。
自分が作品をどれだけ愛するか、愛する結果としてどのような行動に出るか、そしてその行動と他者との差違性を通じて自分がどんな人であるかを認識するとか、そういうソーシャルな部分も含めて、というか、ソーシャルな部分もだからこそコミュニケーションの側面だと思う。作品観というのは作品の人物像について考えてもいるわけで、それってそのまま現実の生身の人間を考えるときの足がかりにもつながる。と考えている。

 

 

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(映画)

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神。神神アンド神。
眼福だろ。
映像表現が濃密でエッグい。

この作品の人間劇は小説がベースにあるからならではだと思う。絵コンテが小説のような。
台詞で何かを言いつつも仕草では別のことをしながらとか、地の文では心情描写があるからそれに則った表情をさせながら神妙な面持ちで意味深な台詞を吐くとか。
多面的にとれるコミュニケーションというものを随所に渡って描いていて、しかも描ききっていてスゴイという言葉しか出ない。

あとはモビルスーツ表現ですよ。
メッサーグスタフカールマハのジェガンペーネロペークスィー。(消防ジェガン)。(ギャプラン)。
どれもすんごいいい演技をする。モビルスーツでありながら映画を盛り上げる一人物であるかのように巨大な機動兵器として画面を揺さぶる。
メッサーVSグスタフカールの時の空間戦闘から地上へ...という流れなんかもう迫力ありすぎるのなんのって。

ただぶっちゃけクスィーVSペーネロペー、なにやってるのかあれよくワカンネェってなってる内にペーネロペー負けてた。夜間の海上戦闘ということでちょっとわかりづらいんだよね。
小説手元にあるので読み直して詳細漁ってから二度目の視聴をしたいと思います(オタク)。
ペーネロペーがフィンをビカビカに光らせながらテールスタビライザーたなびかせて空を駆ける姿は完全に怪獣。どうみてもモビルスーツじゃない。しかも機首にモノアイあるし。
ペーネロペーのそういう表現は本当にイイ。
人が作りしマシンたるモビルスーツが、純粋な人型を経てこんなところまで来てしまった。技術の進歩が、天かける怪獣を生み出した。そう思うと絶妙に感慨深い。
ペーネロペーの飛行表現はガチで最高。

 

あぁこればかりは劇場であらゆる人に堪能してほしいばかりだ...。
モビルスーツ表現に関しては、つねにアイレベルが人間の2m近くの地点からアオリで見上げた「巨人たち」が戦っているような印象を受ける。しかも地球上だからこそ地に足のついた人間からみたモビルスーツ、という表現ができる。
本当にモビルスーツって怖いんだなと思ったよ。

ちなみに人間描写。
というか実はこちらがメインなのだと思うけど、ハサウェイ・ケネス・ギギの絶妙に微妙な関係性の描写は実に色気を感じる。
というかギギは本当に魔性の子って感じ。

一つのシーンの中でも感情の揺れ動きがすごい込められていて、とにかく映像のテンションを揺るがして放さない。自覚しているのか否か、艶めかしさを漂わせる、少女とも女性ともつかない絶妙な容姿。

で、このギギにハサウェイがちょっとムラっとしてるのがいいんだよね。
エレベーター内の隔離空間、女性旅行客のバスローブから見えた胸の谷間を伝う汗をみた後にギギに視線を寄せるハサ。
ギギはハサを見つめている。その艶やかな眼差しがこちらを見通す。ちょっとでも下に目を見やればギギの胸の谷間も目に入ってきそうだ。
そしてささやき合う二人。
ここなんかほんと男の反射的な反応を描いている。ほんっとうにエロティック。
実際ちょっと股間にくる。(笑)

しかもそれが外でモビルスーツだとか爆破だとかやっていてという緊迫感に晒されている中で行われる描写なのね。ましてやそのエレベータもいつ止まるとも知れず。

ここサイッコーだよ。まさにエロスとバイオレンスだよ。実に映画的なシーンだと思います。
と...なんか部分部分について永遠に褒めるbotと化してしまう。
ほんと書き殴りになっちまったが 閃光のハサウェイは映像表現としてもスンバラシイ。

月並みな表現になるけど劇場にいて脱帽しっぱなしだった。
ウワアアア、こええええ!!!カッコイイイ!!!!エロイッ!!!エモいっ!!!!
しんみりだ...からのウオオオオオッ!!!!みたいにずっとテンションを揺さぶられっぱなしだった。

身構えている時には、死に神は来ないものだ、ハサウェイ...